Wheel Of Manchester

Manchester v Cancer gig report : Jan.28/2006 at Manchester Evening News Arena
all text & pix by MAKIO

***イベントのなりたちや主旨はこちらでご理解下さい。***


最近マンチェスターを訪れた方は、シティセンターのトライアングル付近にあるこの巨大な観覧車をご覧に、或いは実際に搭乗された事があるかも知れない。私はショウが始まるほんの一時間ほど前に偶然乗ったのだが、高速回転の為に合計4−5周するのだ。ではお客さんの入れ替えはどうなっているのか?というと、煩雑にみえて実はかなりシステマチックに事が運んでいたものだった。

めまぐるしく入れ替わるお客さんたち。高速で回り続けるその大きな輪は、まるで自然の永久機関のように思えた。

チャリティ・イベントではあったが、今回私が観てきたもの、まさにそれは北部魂のホイール・オブ・マンチェスターだったのだ。


事前に5:30PM開場と同時にショウがスタートと聞いていたのだが、その時間になってもお客さんはまばらでしかも年齢層が高い。マッタリしたショウになるんだろうか?盛り上がるだろうか?と色々危惧していたが、これは全くの杞憂に終わった。ドアオープンは厳密に7:00PMで、ショウがスタートしたのはそれから30分後だった。当然私は気合いが入っていたので、いつものようにのろのろせずに、あのだだっ広いMENアリーナの最前列中央よりやや左よりの位置につけた。ステージとの間には結構なスペースのカメラマン・ピットがあったのだが、まあオーディエンスとしては最高のポジショニングと云っていい。

しかし、発表になっていた大勢の豪華すぎる出演者たちを、一体どうやってショウとしてオーガナイズするのかが全く持って不思議だったが、ステージを一見してなるほどなあ、と納得した。所狭しとそれぞれの機材が既にある程度セッティング済みだったのだ。ステージ上はバンドがパフォームするスペースというよりも、断然機材置き場の様相を呈していた。これが功を奏し、出演バンド間のインターバルは驚くほどに短かった。セットチェンジに時間がかからずすぐさま次の演奏を聴くことが出来る。イベント観覧オーディエンスとしては相当に嬉しい事である。

一番手はベズとそのガールフレンドを擁したDomino Bonesだ。ダンス・ユニットであるという基礎知識を入れて行ったが、割とスタンダードなロック的音楽を演っていた。ベズも女子も元気に弾けて歌い踊っていた。めがねの女子は痩せすぎで、時折ずり落ちたズボンを引っ張り上げていた。(どうでもいいレポですいません)

二番目にステージに現れたのはマンチェの新人、Nine Black Alpsだ。オフィシャルで音源を試聴した時はマガジンぽいものを大いに感じたが、こうして実際に演奏を観てみると全くそうではなく、パンクというよりもむしろ・・・そう、ヘヴィ・ロック・バンドのような音だった。どちらにしても個性という個性は感じられず、私にはあまり魅力的なものには聴こえず終いだった。では若々しさやルックスは?と云えば・・・まさに中庸と云った感じです。

次に今話題沸騰中(一部で)のシンガー・ソング・ライター、Stephen Fretwellをご紹介したい。彼も三曲ほど演奏したのだが、そのパフォーマンスの後ろでは盛んに次のアクトの為のセッティングが行われていた。彼はソロシンガーで、しかも機材はアコギ一本という手軽さであるからこのような扱いを受けたのだろうが、後方ではやはりガヤガヤと騒々しく大変気の毒であった。しかし、人気曲”Emily”を含むしっとりとした、そして時に力強い演奏に周りの喧噪もかき消されたように感じたのは気のせいか。(気のせいですね)何故か彼は最後のセッションに姿を見せなかった。マーとの絡みを観たかったものである。また機もあるだろう。

続いてElbowの登場だ。私のエルボーのイメージはあの木偶人形のジャケのアルバムだけであり、ライブに於いてこのようにアグレッシブなプレイをするとは到底想像もしていなかった。木偶人形だけじゃあだめだ、と思い知らされ、再び彼らの音楽性に興味を抱くに至った。シンガーのもっさりガイは、それほどに気合いのこもった熱唱であった。ダブズのジミと抱擁しあうシーンがあり、そのあまりのもささ加減に息が詰まりそうだった。

Badly Drawn Boyことデーモン・ゴフがパフォームする頃には、会場も熱気で溢れかえるようになっていた。まず彼は、先週亡くなった某に捧げると云って新曲を披露。二曲目、マドンナの”Like A Virgin”から”Silent Sigh”に変わる演出に頬がゆるんだ。始めキーボードにおとなしく座って演奏していたが、”Everybody's Stalking”でこのイベントのオーガナイザーであり、彼のバンドのベース・プレイヤーでもあったアンディ・ロークを呼んだ。会場は割れんばかりの拍手喝采だ。この曲を最後に一旦彼は舞台から消える。

(この頃から、Havenのナットがステージ上をうろうろとジョニーのテレキャスを持って動き回っているのをたびたび観る事になる)

さて、ここからがメイン・アクトのご登場だ。(今までのバンドのファンの方々ごめんなさい)
先ほどのデーモン・ゴフ(彼もジョニー・フォロワーで著名)が再び現れてジョニーへの敬意を表した紹介をおこなった。
ついにJohnny Marr & The Healersが、興奮ボルテージマックスに達したファンの前に、長い沈黙を破り姿を現した(去年のメルトダウン出演もありましたけども)。ヒーラーズはメルトダウン同様のメンバーで、セカンド・ギターにお馴染みジェイムズ・ドヴィアック、ベースにHavenのイワン、ドラムスにジョニーのご近所さんである(憶測)ディヴィッド・トーラン、そしてローディ兼ギター・テックにHavenのナット、という布陣である。”とうとうこのメンツが最終的な次回ツアー・メンバーなのか・・・”との見方も出来るが、今回のイベントの性格上、マンチェスター人以外の人選は有り得なかったとの解釈も出来る。みなまで云いたくないが、そうであって欲しい。(厳密に云うとHavenはマンチェ人ではないですが)

一曲目はいきなりスミス時代の楽曲、”There Is A Light That Never Goes Out”であった。この曲は以前にもニール・フィンとのセッションで何度も演奏済みだが、ボーカルまで取ったのは初めての事だろう。演奏歌唱ともに当時のアレンジに忠実だ。そう、節回しはモリシーのそれと寸分違わぬものであり(これはのちにプレイされた”How Soon Is Now?”にも同様に云える)、すなわち、ジョニー自身の中に或るスミスという”取り扱い注意”的トラウマ感覚のものをぬぐい去った瞬間だったのかも知れない。その後演奏されたヒーラーズの新曲は、前アルバム・ブームスラングで聴かれるある意味ファンを裏切るような類のものではなかった。スミス云々はどうでもいい。これがジョニー・マーという音楽家の、何ものにも代え難い”あるがまま”の個性なのであり、彼自身もようやくその強固な扉を開いたのだから。”Down On The Corner” はブームスラングでも比較的評判の良い人気のある曲だったが、ここでも素敵な前振りアレンジを加えられて演奏された。しばらく彼の歌声を聴いていないなあ、という方々の為に記すと、ジョニーは2003年のヒーラーズ来日時から相当に歌がうまくなっている。彼はその稀有な優美さを持つ音色同様に、歌でもってお客さんを魅了する表現力を身につけたのだ。これは彼のたゆみなき努力の結果と云えるかも知れない。ジョニー・マーという人は仕事の全容が露出されにくい状況下でいつも制作に取り組んでおり、音沙汰の無い時も必ず何かしらの作業に携わっている事が多い。メディアの露出がなくとも、切れ目のないスケジュールの中で今も尚、彼は全てをキープし、そしてスキルアップさせているのだ。ショウを観れば全てが明白である。

そして、ジョニーのもとにロークが現れた。

”僕が最初に学校でヤツとプレイしたのが1978年、そして最後は1987年・・・良いことも悪いこともあった。ほんとに長かったけど、今また最高の時を取り戻す事が出来たんだ”。今までもずっと助け合って友人関係を継続させてきたという彼らだが、諸処の事情があっておおっぴらに出来なかったと思われる。長い年月を経て、こうしてようやっと、衆目の前で、晴れて二人がヒシと抱き合う様は彼ら同様、居合わせた全員の胸を熱いもので満たし、感涙させた事だろう。実は私はこのチャリティイベント開催を知った時、素直に喜ぶ事が出来なかった。チャリティでスミス?ロークと邂逅?後生だからやめてくれよ、そういう薄ら寒い事は!とまで思っていた。だがしかしこの素晴らしい演奏はどうだ。キリキリとしたソロ部分の研ぎ澄まされた音の競演は当時と変わらず、いやそれ以上、”地に足のついた”力強い意志を持つ淀みなき美しい旋律。おめでとう、おめでとう。この日の”How Soon Is Now?”を私は一生忘れない。今っていつさ?今宵この夜なのさ。

−−−ギア・チェックですが、ジョニーはSGからテレキャスにメイン・ギターを替えたのかな?新曲はいずれもリッケン360/12で弾いていました。そのうちの一曲はバーズぽくもあり・・・(笑)。もう一曲はせつないリフが胸を打つ、熱情の暁に消え果てそうな(・・・すみません、やっぱりうまいこと説明出来ませんでした・・・)−−−

トリ前にプレイしたバンドはDovesだった。ダブズだった、と書いたが、彼らのショウはゲストが入り乱れる極めて変則的なショウだった。まず、彼ら自身の楽曲を三曲ほど演奏し、場内の興奮をマックスまで持って行き、その後にジミに呼ばれて登場したのはBadly Drawn Boy:デーモン・ゴフだ。ダブズをバックに”Disillusion”をプレイ。これがもう、最高に素晴らしかった。マキヲ的ハイライトシーンのひとつに数えられるほどに、彼らの息はピッタリと合い、楽曲が生き生きしていた。ウワァ〜なんて素敵なんだろう!と感動にうちふるえている所へ、ジョニーとNew Orderのバーニーが登場!ジミ、バーニー、ジョニー・・・この三方で思いつく最高のユニットがあった。その名はエレクトロニックである!揃った所で彼らが演奏したのはエレクトロニックではなく、ルー・リードの”Vicious”と、ジョニーの好きなモータウン、R.Dean Taylorの”There's A Ghost In My House”であった。バーニーはいつものように”ハッ!!”だの”ホッ!!”だの張り切って声を発し、よろよろと踊っていた。例えエレクトロニック再結成の夢は幻と消えても、私は嬉し死ぬかと思うほどに心の底から楽しくて仕様がなかった。最後にダブズのラスト曲の定番、”There Goes The Fear”をジョニーを交えたまま演奏し、ダブズの出演は一旦終わった。

*ここで一応言及しておきますと、DJやマニはいつ登場したのか?という事ですが、DJブースはステージの右側面一帯にセッティングしてあり、バンド演奏の合間合間に登場していたらしい。らしい、というのは、私の居た正面からではその姿を全く観る事が出来なかったからだが、バックスクリーンにDJたちの姿が映し出されていたので”ああ、DJやっているんだなあ”と窺い知る事が出来た次第である。さらに記すと、出演バンド紹介をラヂオ曲のパーソナリティやトニー・ウィルソンなどが出てきてやっていた。紙頭のフランク・サイドボトムもステージをうろちょろしていた。*

とうとうオオトリ、New Orderがステージに登場した。

私はNOはずっと前からだいぶん好きでしたが、去年のフジで観たのが初めてだった。なので、このようなセットを通常演奏しているのかどうか解らないが、この日のNOは、Joy Divisionの曲しか演奏しなかったのだ。WARSAWなんて普段演るんですか?いや、嬉しかったです。バーニーは相変わらず歌詞を忘れたりコード忘れたりカンペから目が離せなかったり、仕舞いには一曲忘れて帰ろうとしてお客さんに笑われていた(笑)。のにも関わらず、一曲毎に会場全体を狂熱の坩堝へと導いて行った。恐るべしNOマジック・・・サムナー・マジック。フッキーはずっと左端で足を開いたままでした。たたみかけるように”Love Will Tear Us Apart "と”Ceremony"を演奏し、彼らは全てのセットを終えた。

さて、大団円である。ベズとショーン(・ライダー)を中心に、Happy Mondaysの曲”Wrote For Luck”を出演バンドのほぼ全員でセッションした(Nine Black Alpsとフレットウェルはのぞく)。ジョニーは中央後方あたりで控えめにギターを弾いていた。その横には何故かダブズのジェズがピッタリとくっついており、くっついたっぱなしで全く離れなかったのが可笑しかった。多分マンデーズの曲のコードが解らなくてジョニーをひっきりなしに覗いていたのだろうと思われる。その様子が、ジョニーのプレイを一生懸命習得しようとしているようにも見え、大変微笑ましい光景だった(そして彼は始終物凄い笑顔だったのだ)。ジョニーは昨今、”マンチェスター・レジェンド”と称される事が多くなったが(私としては遺物みたいで不本意ですが)、それもあながち間違っちゃいないのかもなあ、と、ジェズや、嬉々としてローディに徹するヘイブンのナットを眺めていて思ったものだった。


*** MAKIO欄外コーナー ***

思い切ってマンチェスターに飛び、ジョニー・マー見たさにこのような素晴らしいギグを観れた事を大変嬉しく思っています。イベント自体もさることながら、その裏にあるもっとドラマティックな真実をちょっとだけ垣間見れた気がして、勝手に参加者のひとりになってしまった気分です。珍しい事に、このイベントはチャリティにありがちな嘘くささと偽善ぽさが全く感じられず、しかも驚くほどキッチリと統率されていました。トータルで約5時間という長丁場でしたが、その経過すら意識する暇がありませんでした。実に細部まで考えられて、全員で一緒に作り上げた好イベントだったと思います。それもみんな、マンチェスター出身という共通項だけで。たったそれだけなのに、何故こんなにも彼奴らは楽しそうなんだろう(笑)。きっとマンチェスターに生まれ育たない限りは解らないのでしょう。

云うまでもなく、私の最大の目的はジョニー・マー(&ザ・ヒーラーズ)の演奏を聴きに行くという事でした。春頃新譜リリースとはオフィシャルに公表されていますが、そんなのもう待っていられるか!という気持ちだったと思います。そして、彼はずっとヒーラーズというバンドを率いてはいますが、流動的なメンバーのヒーラーズなど率いていても仕様がないんじゃないか、もうソロでいいじゃないですか?と心のどこかでずっと思っていまして、彼は誰も信用出来ない、本当はひとりぼっちで孤独なソロイストなんだと思いこんでいたのです。

が、彼はひとりじゃあなかった。

ヒーラーズは、云ってみれば誰でもないバンドの総称なんだなあ、と思ったのです。逆に云えば、ジョニーを取り巻く全てのものがヒーラーズなんだなあ、と。今回のショウで、その事がようやく解った気がしました。

今度ジョニーと話す機会があったら、”ヒーラーズのひとりになりたいのですが”と訊ねてみるべきか。

しかし、”How Soon Is Now”では、モリシーばりに声が裏返ったりして面白かったです。完全に彼の歌唱法を踏襲していました。それで良いのだと思いました。それが自然だと思うし、スミスの曲に関してはわざわざ独自性を打ち出して歌わなくてもいいんではないか、と。そして、これからもずっとスミス曲を歌って行くべきであるとも思いました。良い楽曲はどんどん沢山の人に聴かれ続けなければならないし、それをやるのが本人たちだなんてこれ以上素敵な事はないでしょうからね。

スミスを演ろうと、ディランを演ろうとヤンシュを演ろうと、ジョニーはジョニーでありさえすればそれでいい。

(アンディ・ロークよ、どうも有難う)

Feb.2,2006 / MAKIO
(もっとくだけたギグレポート含むマキヲ・マンチェスター旅日記”Speak French Or Die"も近日公開予定です)

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