ROCKIN'ON  JUN/85

text by : Robin Gibson

貴方の子供時代はどんなだったの?まさか、モリシーみたいに悲惨だったわけじゃないよね。

「まさかまさか、僕はすっごく楽しかったよ!職がなくて失業保険うけてた時だって、とっても楽しくやってた・・・そりゃ、もっと金を稼ぐ事だって出来たかも知れないけど、とにかく生きて、ギターを弾いていられたんだからさ。正直言って、僕はひたすらギターが弾きたかっただけなんだ。働きに行く気もなかった、少しの間仕事をしたこともあるけど---ギターさえ弾いていられりゃ、金のないのなんて気にもならないもんね。両親との折り合いは悪かったけど。15の時に家を出たんだ、だけどそれだって面白かったんだぜ。自分が今迄やった事の中でも最高の事だと思ってる」「そう、だから、今振り返ってみると実に素晴らしい少年時代だったね」

とすると、スミスの一員である事が変じゃない?きみたちの歌って、どれも人生の暗い面ばかりを歌ってるじゃない。

「確かにね--だけど、本当は悲喜劇的なものなんだ、そういう見方をすればモリシーの歌詞は笑えるよ。彼はわざと可笑しい文句を並べてヘンな書き方をするんだから、当然こっちは笑っちゃう」「他にもあるよ、”ヘヴン・ノウズ・アイム・ミゼラブル・ナウ”なんて全てが最高だね。最高のタイトルだと思ったよ、スミスの本質をついてるね。そこまで見え透いてるのって、楽しいよ」「だけど僕がソングライティング・チームの片割れで、詞の内容が僕の人生を反映してもいなければ僕の人生に影響を与えもしないなんて、考えてみれば奇妙な話だよね。でも一人のリスナーとしてモリシーの詞を味わうことで僕は充分満足してるよ。昔も今も、それは変わらない」

メディアの目はモリシーにばかりどんどん集まっていって、それも殆どはスミスの音楽とは関係の無いような事ばかりで、残念な気がするね。でも一般大衆にとっては、どの程度スミス=モリシー、なんだろうか。

「ファンのみんなはよく、”モリシーひとりが雑誌の表紙になってイヤじゃない?”ってきくけど、どうしてそんな事が問題なのか僕には分からないな。そんなふうに人が思うのが最初は不思議だったし、今は妙な気がする」「個人的な事を言えば、僕自身はただみとめられたいと思うだけ---音楽を真面目に考えてる人達にギタリストとして、或いはソングライターとして評価されたい。僕らに対して世の中が持っているイメージのどれも、僕は不満はないよ。それはマイクやアンディにしても同じさ」「モリシーがあれだけ賞讃を集めるのだって僕は当然だと思ってるし。いや、もっともっと騒がれてもいい筈だと思うね、彼の歌唱力をまだ誰も褒めてないし。まあ、彼の他の部分が目立ち過ぎるのかもしれないな・・・」「だいたいのバンドってこうだろ。”やった、時代を超えたポップ・ソングを書いたぞ”って、実はアレサ・フランクリンの曲と同じコードだとか、そんなことなのさ。みんなそういうのが保証書になるんだと思ってる」「歌うという点でそれをやってるのがスパンダー・バレエのトニー・ハドリーさ。あんなに力強い男性的な声で吠え立ててさ、トム・ジョーンズかトニー・クリスティかって感じ。いわゆる一連のクラブ歌手だよ。でもモリシーの声はもっとこう、彼独特のものだし魅力があるし、わざとらしい感じがしないしさ」

スミスの音楽をこじんまりとまとまりのいい形に納めておこうという、意識的な牽制は働いているのかな?貴方達の音楽って、あんまり過激になったりメチャクチャになったりする事がないでしょう。

「本当を言うと、はじめの頃は曲を作るのにもそんな風に妥協する事はしなかったんだけど、結局みんなにわかってもらえるものを作りたいと思ったんでね」「みんなのお得意の、流行のポップ・グループ---例えばFGTH---っていうのは、商業的に手の届くところにいるわけで、一般的なレコード購買層も日々その音に触れることが出来る。だから僕らもその手を利用させて貰おうと思ったのさ、僕にだって万人受けする曲を書くことくらいできたから。それでもそれがスミスのシングルみたいになったのは、僕らの演奏の仕方と、歌詞のせいだね」

不思議なのは、きみたちの音楽はどこも別に新しいところは無いのに、今迄の音楽のなにかに似てるわけでもないって事なんだよね。一面では、貴方達はただ現存するポップの美学を完璧にマスターしただけといえるけれど、同時にきみたちこそが(微かに)何か大きな変化を引き起こしつつある、って気もするんだ。

「まあ、いくらニック・ケイヴが音楽の容態を変革するんだと意気込んでたとしても、聴いてくれる人が増えなきゃ誰も誰の事を知らないまんまだものね。結局は、それだけビッグになる気があるか、って事さ」「僕は、スミスが60年代のビッグなグループみたいに”御家庭のバンド”になればと思う、ビートルズみたいに。彼らは一軒一軒の家の中に入り込んで、それからセックスやドラッグなんかについても歌い始めたんだ」「僕らも全く同じようにテレビに出て、それをみんながお茶の間で観て、モリシーは歌ってた、”ぼくのこの手をきみの乳腺の上に置かせてよ”・・・」「そして僕らの新しいLPが発売と同時にチャートに上ったって事は、例えば仕事途中の車の中でカセットをかけてる人だってかなり大勢いたって事なんだ。そういう風にファースト・アルバムを聴いた人たちは”サファー・リトル・チルドレン”まで来ると、突然60年代のマンチェスターで起こった惨劇を目の前に突きつけられるというわけさ。僕ら、あの曲を自分達で誇りに思ってたからこそシングルのA面には絶対しないって決めたんだ。ラジオでかかるわけがないからね。だからこそ僕らは御家庭バンドになりたいっていうのさ。いや、自分が計算して音楽を作ったなんて事は考えたくも無い。今はこういう歌を出すべきだからなんて考えて曲を書くことは僕には出来ない。でも、結局は世の中に僕らの考えを浸透させたいと思ってるんだね。知らないうちに苛々してる」

最後に、一番大事な質問を。”バック・トゥ・ジ・オールド・ハウス”や、”彼女の発言”なんかを聴いていると、たしかにスミスは心に深く触れる、と思うのだけれども、ふと、本当に信じていいんだろうか、って気にもなるんだよね。彼らの行動ひとつひとつに、嘘いつわりがないと信じられるんだろうか、って。

「ああ、そうか・・・誠実かどうかって。もう、僕らがどれだけ正直か念を押すのもくたびれたよ。どう言ったらわかってもらえるのかわかんないな。僕はただ、スミスは久しくなかった信じられるグループだ、と思っているよ」

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special thanx : Ms. banana co.