ELECTRONIC (JOHNNY) INTERVIEW
CROSSBEAT APR.99

interviewer : sumi imai

今回は以前にも増して、全体にあなたのギターがよりフィーチャーされた、厚みのあるバンド・サウンドが鳴っていますよね。

「うん、先の2枚でテクノロジーについて知るべきことは全て学んだから、自分に必要の無いものを破棄することが出来たんだ。その過程でコンピューターやサンプリングとかを落としていった。アイディアを形にする時、一番ダイレクトな方法はギターを使うことでさ、めちゃデッカイ音でギターを弾くってことの良さを再発見したんだよ。過去には人々は僕に、ギター・プレイヤーとしての役割についてばかり質問してきた。でも僕にとってそれは全てじゃなかったから、ギター弾きとしての地位は僕には居心地が悪かったよ。人々にはもっと、僕の音楽作り全般のことについて聞いてもらいたかったんだ。・・・振り返ればあれはある意味、僕にとって技術面で色々学ぶ課程だったんだよね。自分に何が適しているのか、実験をしていた。今までシンセやピアノやストリングスのラインを聴くと、人はすぐバーナードが書いたものと思ったものさ。実際は僕がやったやつでもね。人々が僕にギターを弾くのを望んでいたのは、自分でも分かっていたけれども・・・。でも今、僕はそれに心地よさを感じる。この2,3年、一人で居るとギターに向かうようになったよ。今回の曲はギターから生まれ、その上にテクノロジーを付け加えているんだ」

そういった今作での全体の音の方向性は、どのようにして決められたんでしょうか?

「僕らは実際腰を落ち着けて、アルバム制作についてじっくり話し合ったんだよ。僕は曖昧なアイディアを形にするために毎日スタジオに通ったりしたくなくて、確固たる方向性が見えてから、スタジオ入りしたいと考えていた。バーナードもそれに賛成して、別々に作業した。って言っても一週間くらいだけど(笑)」

なんだ、一ヶ月とかじゃなくて?(笑)

「うん(笑)、でも僕らはそんなこと一度もなかったからさ(笑)。8年間ずーっと一緒だったんだよ、週末を除き毎日。でも今回はバラバラに書いたものを各自持ち寄った。それは健康的なやり方だったかもね、アイディアが新鮮なうちに、お互いのものを融合させたりして。”フリッカー”なんかは、ニュー・オーダーにもスミスにも出来ない、僕ら二人にしか作れない曲だ。僕らはエレクトロニックが単なる趣味の域を出ないサイド・プロジェクトとしてしか見られてないのが、ずっとフラストレーションだったんだよ」

二人の意見の対立などはない?

「うん、全然。僕らはお互いに信用し、尊敬しあっている仲なんだ。このグループは僕が今までやったどのバンドよりも長続きしてる。それは、僕らが他の何物でもなく、友情によって結びついているからだ。二人とも情熱を持ち続け、お互いを理解している。人間としてもミュージシャンとしてもタイプは違うけど、共有出来るものがあるのが大事なんだ。ニュー・オーダーとスミスも全然違うサウンドだったけど、両方ともが人間の情感を表現している。ダンス・ビートであれ、バック・ビートであれ、そんなのはどうでもいい。エモーションと情熱がある。それが僕らの共鳴できるところなんだ。友情でも音楽でも、それが大切なんだよ」

ところで丁度エレクトロニックがデビューした89年末も、”ダンス・フロアとギターの融合”というムーブメントがありましたが、この2,3年も、ケミカル・ブラザーズやプロディジーのように、ダンスとギターの合体が大きなひとつの流れになっていますよね。

「うんうん、だから僕らは皆の10年先を行ってたわけだ(笑)。ダンス音楽には時に過激な新陳代謝が必要になる。90年代半ばにはダンス音楽には面白みがなくなり、パッションやエモーションがなくなった。だから数年前にもいわゆるダンスものにはちょっと飽きちゃったんだ。インストばかりで、何かキメてなきゃ楽しめない。音楽自体が良ければいいはずなのにさ。80年代初期のエレクトロ音楽でも、ハウスでも、人間の感情があっただろ、グレイトなヴォーカルが入ってて。だからそこに情熱を加えて覚醒させなければと、ロック・ギターが注入されたんだ。プロディジーやケミカルは、インダストリアルだとか幻覚的でありながら、うまく人間的要素を復活させたと思う。両方とも好きだよ」

エレクトロニックは、今年どういう形で活動するんです?バーナードにはニュー・オーダーが控えているし、あなたは?

「実はあっと驚くような計画があるんだよ!」

ええっ?それって一体?

「今、僕は音楽に燃えているし、一緒に演れるイカした友だちもいる。それで、ちょっとした計画があるんだ。・・・ラッキーなことに僕には、僕の音楽を愛してくれる人々がいる。スミス以降、僕のやってる小さな実験を応援してくれる人々が居て、離れずついて来てくれた。そういう人々の何人かと一緒にやりたいって考えているんだ。日本にも支えてきてくれた人達がいるしね。具体的にはまだ分からないけど・・・。僕はまだ自分のキャリアの半ばにいると思ってるよ。それにバーナードがニュー・オーダーを始動させる気になったのは嬉しいね。彼がハッピーなら僕もハッピーだから。そっちの方は何の問題もないよ」

ふむふむ。その計画というのを、期待して待ってます!ところで最近TVで放映されたスミスのドキュメンタリー番組で、あなたは”スミスは82〜87年の、世界最高のバンドだと思う”と発言してましたよね。現在のシーンにも、スミスを聴いて育った世代のアーティストが活躍しています。バーナード・バトラー、マンサンのチャド、ブラー、プラシーボなど。このように、後進に多大な影響を与えたという自負はありますか?

「正直言って、ミュージシャンとしてこの上なく光栄だと思ってるよ。人に影響を与えるというのは満足感が得られるし、誰かが自分の良さを分かってくれるのは大きな励みになる。彼らは皆、才能あるミュージシャンだと思うし。僕の世代なんかは、たとえ誰かから影響を受けたとしても、それを口にしたりはしなかったね、僕自身もそうだった(笑)。だからそんな風に僕の事を挙げてくれる彼らは立派だし、心が広いと思うよ。昔、郊外の家の一室で僕の音楽を聴いていた少年達が今、自らミュージシャンとなっているなんて、功績を上げた気持ちになれるな。僕の方こそ感謝したいよ。・・・プラシーボのブライアンを見てると、彼は自分の音楽だけでなく、ポップ・ミュージックを信じているということが分かる。胸のすくような思いがしたね。ポップ・ミュージックは単なるエンターテインメント以上の何かで、人々にとって重要な意味を持つということを、僕も信じているからさ。それからマンサン、彼らのライブはスゴいよな!チャドはもっとこういう感じ(と、俯いて静かにギターを弾く真似)だと思ってたんだ。それがこう(と、激しいアクションでガシガシ弾く)だろ?ブッ飛んだよ!」

ええ、わかります! で・・・話は変わりますが、例の印税裁判問題ですけど、

「・・・うん?」

私のような部外者のスミス・ファンから見れば、アンディとマイクは取り分10%でも、フェアな気がしたんですけど、

「ホントそう思う?(手をポンっと打って)そいつはいいや(笑)、あははは(笑)」

(笑)もうあなたは手を引いたそうですよね。やはりもうモメるのはいい加減うんざり、という気持ちからだったんですか?

「うん、そうなんだよ。スミスが解散して2年経って、この裁判問題が持ち上がったとき、マイクと話をつけて解決しようとしたんだ。もし金銭で彼がハッピーになれるなら、それでいいさと思ったけどね・・・。信じられないくらい嫌な経験だった。でも結果として良いことも生まれたんだ。裁判所に座っていて、これは僕の関わるべき問題じゃないと気付いた。裁判官達が関心があるのは、何が正義で何が真実かということじゃなく、誰が一番弁が立つかということでさ。自分にとって一番重要なのは、そもそも僕が何故音楽を始めたかということ、何が僕を音楽に駆り立て、ミュージシャンになったかなんだと気付かされたんだ。誰が金を勝ち取るかなんてどうでもよくなった。裁判の正に最後の日、僕は裁判所から外に出て、車に乗り込んだ。サングラスをかけ、ロンドンの街を走ったんだ。エレクトロニックが持ってるスタジオへと向かって。そしてギターをすっげえ大音量でかき鳴らした、フィードバックを思いっきりかましてさ。”僕がやりたいのはこれなんだよ!他はどうだっていいんだ!”ってさ!この10年いろんなナンセンスも経験したさ、だけど僕は今これをやってる、って。沢山の金を貰って苦い気持ちで家に居るよりどれだけ金を払おうと、これをやりたい!ってね」

んー、痺れますね!ところでバーナード・バトラーはスウェード脱退後、色々な人とのセッションを経て、バック・バンドを従えたソロを始動させましたよね。あなたはそういった”ジョニー・マー・バンド”を母体として活動していくつもりはないんですか?それともエレクトロニックが”母体”?

「うーん・・・そうしようと思う時期が訪れる可能性はあるよ。ま、バンドを組んでもジョニー・マー・バンドとは呼ばないけど(笑)。僕はまず人間的に共感できる人としか一緒にやりたくはないんだ、音楽的にもね。最近までそう感じさせてくれるミュージシャンはいなかったんだけど、乞う御期待かも。
子供の頃から、自分をクリエイティブにかきたてる何かに自分を捧げてきたけれど、20代の終わりに子供も出来てさ、人生のもう一つの面を経験したんだ。それを選択したのは正しかったと思うよ。そしてまたこっちの道に戻った。それは歳を取るという過程の一部だったんだ。ただひたすら盲目的に走り続け、突っ走って、最後に燃え尽きてしまうのではなくて。もうやりたいことはやり尽くしてしまった、もうレコードは作れない、って風にさ。僕はラッキーだった。エレクトロニックに感謝したいよ。レコードを作るということと、普通に生活するということ、その両方に打ち込める。バーナードはそんな信念があり、自分のやっていることを客観的に見られる人間なんだ。彼から学ぶことは多いね」

普段、日常はどう過ごしてます?

「それは大体3種類あるな。まず朝6時に起き、1時間くらい話もせず、何も聴かず何も読まず、静かにしてる。そしてその気分を1日キープする。外界を避け、音楽に向かうんだ。ディクタフォンを持って、浮かんだアイディアを録音する。釣りと似ているな。二つ目は、バーナードと会ってアイディアを持ち寄ったり、歌を入れたり。三つ目は、それをより整った形にして、夜通しスタジオで作業する。あ、もう一つ大事なのがあるよ。朝起きると7歳の息子と4歳の娘が”ダディダディ!2日も留守だったよね!”これ見て見て!”って首にぶらさがってくるんだ、うわー、これが現実!って感じで(笑)。で、”公園へ連れてって!””ねえ聞いて聞いて!”って大騒ぎさ(笑)。これが僕の日常生活(笑)。あ、もうひとつある。友だちから電話がかかってきて、三時間くらい喋るんだ。”あのレコード聴いたか?最低だよな!許せないよ!”って。僕はいつも聞き役で”うんうん、わかるぜ”ってさ(笑)。そんな友だちが何人かいるよ」

わはは(笑)。・・・最後に、あなたが音楽を通じて一番やりたいこととは何ですか?

「・・・一年くらい前さ、一見音楽とか聴いてなさげな一人の男性が僕に話しかけてきて、思いがけなくこう言ったんだ。”あなたの音楽のお陰で、世界はマシな場所になったと思う”って。直接的な表現だったけど、胸を突き動かされたよ。ありがたいね。自分でも常に気をつけなければと思うのは、エゴの塊になることだ。でもスミスにはそういう意味で感謝してるよ。そういうことが僕を、これからも頑張ろうという気持ちにさせてくれるから。自分が音楽を聴いて感じる何かを、人にも感じてもらえたらと思うんだ。僕はここまで成功してこられてラッキーだった。この世には、自分の音楽が人々の耳に届くまでに苦闘しているミュージシャンだって沢山いるんだから。マッカルモント&バトラーの”イエス”なんて、何度も何度も繰り返しかけ続けて聴いたよ。そういう瞬間を僕は求めているんだ。そんな気持ちは他のどこからも得られない。自分でも曲を書いてて、”これだっ!これなんだっ!”って思える瞬間、それはドラッグからもセックスからも得られない最高の一瞬でさ。この”これだっ!”って気持ち、それを僕の音楽から感じてくれる人が、この世のどこかに絶対いるはずだと信じたいんだ」

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