ELECTRONIC INTERVIEW
ROKIN'ON AUG.96

inverviewer : yukiko kojima + kohji miyazaki

前作から三年ものインターバルがあった訳ですが、まあ御二人ともその間いろんな仕事をしてたとはいえ、何でこんなに時間がかかったんです?

B(バーナード・サムナー)「僕はこの間スキーやヨットに明け暮れたからなあ」

5年もただ滑ったり日焼けしたり?

B「いきなし責めないでよ(笑)。でも三年はやってたな」

J(ジョニー・マー)「(おかげでこいつやたら上達しちゃってさあ。もうオリンピック選手並の腕なんだぜ、マジで」

(笑)そりゃそうでしょうが、もっとアーティストらしいシリアスな理由はなかったんですか。

B「(笑)いやだから、本当はもっと深刻な理由があったんだって。例のファクトリー・レコード倒産事件がまだ長引いててさ、後始末が大変だったんだよ。莫大な借金を残した挙句、社長(トニー・ウィルソン)は夜逃げ同然で蒸発してたから、とばっちりが僕ら株主連中に全て降りかかってきちゃってさ。連日借金取りからの脅迫電話やら告訴状やらで、とても創作活動に集中できるような状態じゃなかったんだって。そうだな、三年はしっかりそれの処理に追われてたんだから、勘弁してくれよ」

J「それと、僕らのメンツの為にもいっとくけど(笑)、もともと僕ら二人が音作りに関して異常なほど執着する傾向があるってのも理由だね。とにかく一音一音、偏執的なまでにこだわってさ、一曲仕上げるのに気が遠くなるくらいの時間と試行錯誤を必要としたんだよ」

ふーむ。では、結成当時からもともとパーマネント・ユニットとして意図されたものではなかったエレクトロニックに、再び戻ろうとしたのにはどういうモチベーションがあったんですか。

B「でもね、僕ら自身としてはこのユニット自体がアルバム一枚きりのものじゃないっていう自覚は最初からあったんだよ。だからこそ、前作を作り終えた時点で、”じゃまた一緒にやろうぜ”ってどちらともなく約束しあった訳で」

J「うん、だからその後、僕はザ・ザの活動に戻った訳だけど、自分としても”これが終わったら必ずエレクトロニックとしてまた作品を創りたい”って思いが確実にあったんだ。とにかくバーニーとのコラボレーションはすごく新鮮で、楽しい経験だったからね」

なるほど。だとすると、今作もまたもや嫌になるくらいポップ・チューンで固めまくったのは何故だったんでしょうか。そもそも前作は、”マンチェスターの二大偏屈があえて三分間ポップを演る”という点に最大の意義があった訳ですから。

B「ぐ・・・・・・・。うーん、こりゃかなり気をつけて答えなきゃならない質問だな。答えようによっちゃ、もう僕らのアイディアは枯渇してしまったって風に受け取られる恐れもあるしね。君が本当に言おうとしていることは僕にもよく分かってるよ。なんでまた今回もこんなベタベタにラジオ・フレンドリーで大衆的な作品を創ったんだ?って訊きたいんだろ?」

ええ、そのものズバリです。

J「(笑)本人達を前にして、随分ハッキリ言ってくれるよなあ」

B「昔からそうなんだよ、このヒトは。でもね、これは別に僕らがもうこの手の大衆作品しか創れなくなったからってんじゃなく、このエレクトロニックってユニット自体が僕らにとってはまだ初歩的な段階だからなんだ。まだ、基本的なポップ・ソングの書き方を確立してる最中なんだよね。この方法論が充分に突き詰められたら、そのときはもっと実験的なものに挑戦していこうと思ってるんだよ」

J「それに、いわゆる実験的でアバンギャルドな手法は、僕ら二人とも過去のバンド活動でもう何年もやってきてるしさ。今更それを違う顔ぶれで再開したとしても、僕ら自身にとっては全然挑戦でも何でもないんだよ。そりゃ僕らがまだ音楽を始めたばっかりのティーンエイジャーだったら、自己の表現欲の赴くままに好き勝手にアバンギャルド性を追求するのが冒険なのかも知れないけど。だけど、もう僕らは散々やり尽くしてきたんだ。だから、逆にこういったクラシックな手法における三分間ポップを書くことの方が、むしろ冒険なわけ。少なくとも現時点ではね」

うーむ、うまく丸め込まれたような気が・・・。じゃあ話は変わりますが、時代はこの5年の間に目まぐるしく変化し、あなたがた80年代に構築した”内省と洗練”の空気は、狂騒的なブリット・ポップ勢に吹き飛ばされ、粗野なロックンロールが復権している有様です。この事態についてコメントを。

J「もともとバーニーにしろ僕にしろ、昔からいわゆるラッディズムマッチしないタイプだからなあ、何を言っても批判がましく聞こえてしまうんじゃないかなあ・・・。勿論若いときには大酒飲んで道端で意識不明になってたりはしたけど・・・」

B「だから、そういうのはとっくの昔に全てやり尽くしたって感じだから-----、あっこういうこと言うと、また隠居したみたいに言われるんだぜ、きっと」

J「まあそういう風潮とともに、ポップ・シーン自体が活性化してきてるってのはいいことだと思うけど。でもなあ、過去からのインスピレーションばかりに頼るってのもねえ、純粋にアーティスティックな視点から見た場合、決して健康的な傾向だとは言えないわけだし。具体的な例を挙げれば、昨今のインディー・ギター・バンド連中より、プロディジーみたいなハード・コア・テクノ連中の方が、個人的にはよっぽど本来的な意味で進歩的かつプロダクティヴな意義性を持ってると思うんだけど」

B「だからもうやめとけって。外野の人間にとっては。本当のことを言えば言うほど、ジジイの小言にしか聞こえないんだからってば」

(笑)何もそういうところに焦点を当てた訳じゃなかったんですけど・・・。にしてもですね、今回当惑してしまったのは、このアルバムの時代的必然性の希薄さだったんです。今や、先を争うように時代との接点をあからさまに強調したバンドや作品が乱発される中、今作はそういう風潮へ冷や水をぶっかけてやろう、みたいな意図もあったんでしょうか。

J「ん〜・・・っていうよりも、”どのシーンにも属さない方法論で”っていうのが、僕ら本来の出発点だった訳で。スミスにしろニュー・オーダーにしろ、この点に関してだけはキャリアを通じて貫いてきた主義みたいなものだったんだよ。たとえ結果的にはそういう自分達がある種の”シーンの先導者”的捉えられ方をしてきたとしてもね。だからそれはエレクトロニックという新形態を通じての表現においても、この点だけに関しては全く変わらないんだ。既存のシーンに対するアンチの姿勢から始めたんじゃなく、最初からどのシーンとも無縁な場所が出発点になってる訳だから」

なるほど。でも例えば、あのマンチェ随一のろくでなしショーン・ライダーでさえ、ある種のモデル・チェンジをして今日的なマンチェ・ビートを模索してるわけですが。もうそういう時代の先端に立って伸るか反るかの活動に身を任せるのは、正直言って疲れたって感じなんでしょうか。

J「これもまた随分ひとをジジイ扱いした質問だよなあ。ここまでくるともう僕としては何でも勝手に言ってくれって感じだけど(笑)」

じゃあ更に訊きますが、もしあなたがたが今ティーンエイジャーだったとしたら、この質問に対し同じ答え方をしてたと思います?

B「そりゃ・・・多分もっと違う答え方をしてただろうけど。でも実際、僕らはもうティーンエイジャーじゃないんだしさ。今更若作りした世代言葉で表現しようとしたって、かえってブザマなものになるだけだよ」

J「いや、でも僕は、今自分達がやっていることはそういう世代感覚とは全く無縁のものだと思うんだけどな。個人的にももし自分が今ティーンエイジャーだったら、ブラーやオアシスやパルプやその他のブリット・ポップ連中じゃなくて、多分プロディジーを追っかけてたと思うし」

ふむふむ。では、あなたがたの信条について是非この機会に訊いておきたいんですが、あなたがたはダンス・ビートに異常なほどの執着を見せているにも関わらず、実際作っているサウンドには、いわゆるロック的な肉体性重視のビート感は絶無ですよね。あなたがたがそのキャリアを通じて追求してきたのは、もっと内省的な、いってみれば思考のビートみたいなものなんでしょうか。

B「だよな、多分。究極的にはクラブで踊るためのダンス・ミュージックを書いてるんじゃなくて、家でヘッドフォンをつけて聴くための音楽、それにダンス・ビートがくっついたものを書こうとしている訳だから。いわば”踊れないダンス・ミュージック”を演ろうとしているようなものだよね。最終的にはそういう構成の中で、情緒的なメロディーを強調して、もっと内省的なものに訴えかけるようなサウンドを構築するのが僕らの本来の狙いだったんだし」

なるほどね。じゃ最近のアーティストでそういう踊れないビートを鳴らす連中といえばやはりトリッキーが真っ先に思い浮かぶんですが、御二人ともああいうサウンドについてはどうですか。

B「つくづくセンスのいい連中だと思うね、個人的にもああいうミニマリスト的ノリは大好きだな」

J「うんうん、僕も好きだなあ、ああいうハッパ系のノリって。特にダンス・ミュージックのパンク版とも呼べるプロディジーを聴きまくった後なんか、もう最高だよね。たまんないよ、あのフリーキーな均衡感が」

ハッパ系のノリが好き!?知られざるジョニー・マーの一面を開陳してますな。

B「(笑)実はそういう面でも気が合ったんだ、僕たち」

ところで前作のエンジニアには今をときめくプロデューサー、オーウェン・モリスの名がすでにあった訳で、あなたがたがいかに無名の新人達にチャンスや影響を与えてきたか改めて思い知らされるんですが。確かにジョニーは、無名時代のノエル・ギャラガーに4,5年前会ってるんですよね。

J「うん、よーく憶えてるよ。ある知人を通して初めて彼の名が耳に入ったんだけど、話を聞けば聞くほど興味深いキャラクターの持ち主だなと思ってさ。どうしても一度会ってみたくなって、とうとうその知人に紹介してもらうことになったんだけど。いざ会ってみたら・・・やっぱり想像してた通りの奴だったよ(笑)。初対面だってのに全く物怖じしないっていうか、当時からやたら自信家で、ある種傲慢とも呼べる自己確信を全身から漂わせてる奴で(笑)。そのくせ絶妙のユーモア・センスがあるもんだから、クソ生意気なんだけど、どっか憎めないっていうか。つくづくユニークでダイナミックな奴だなと思って、即意気投合しちゃったんだよ」

何でも、その際ノエルと一緒にさるギター・ショップへ行き、そこであなたがとても高価なギターを買うのを見てノエルは”俺もいつかあんなギターが買えるようになったるっ!”とその野望にさらに火をつけたそうですね。そもそも彼のギター・ヒーローはあなただった訳ですし、どうです、オアシスのこのブレイクには感慨がありますか。

J「なんか、正直言ってむずがゆいものがあるよな。でもいかにも奴らしいよ、それって。普通ミュージシャンってのは本心では誰よりも自分が上だ!って思ってる人間が多いから、なかなか他のミュージシャンに対し”影響を受けました”とか”あれが励みになりました”とか口が裂けても言えないものなのに、奴はインタビューの場でさえそれを躊躇無く口にしてしまう。つくづく裏表のない、ほのぼのした奴だよなあ。世間ではとかく奴の傲慢さばかりが取り沙汰されてるみたいだけど、むしろそういうふと言葉の端々に顔を出すあったかさこそが、奴の本性なんだよね」

アニキ節ですな。ところで、あなたがたほどある意味で、バンド幻想と距離を置いてきたミュージシャンも無かったと思うんですが、どうなんでしょう、殆どのバンド不和がエゴ・マニアックなヴォーカリストと音楽求道ギタリストとの確執が原因ですよね。

B「あっ、なんか遠まわしに訊こうとしてない?」

J「なんか匂うな(笑)」

いえいえ(笑)。えーと、しかしながらバーニーはヴォーカリストでありながら、そういった尊大さとは無縁な印象ですよね。まあ、ほんとのところは別としても(笑)。

B「おいおい、何を僕に当てつけようとしてるんだ?」

J「(笑)違うって。だって、お前は昔ギタリストだった経験があるから、その辺のエゴのコントロールは通常のヴォーカリストよりよっぽど上手いじゃん?ステージに上がってる時と降りた時とではそれこそ見事なくらいパチンと切り替えが出来るしさ。間違っても四六時中、自分の事ばかりに取り付かれてるどこかのヴォーカリストみたくなる恐れなんか、全くないよ」

B「うーむ、カリスマ性がないって言われてるみたいで・・・喜べばいいのか悲しめばいいのか・・・」

あなたの場合、素直に喜んでいいと思います(笑)。という訳で、まあ、モリッシーについて訊こうかな、と(笑)。

B「(笑)出た〜〜〜〜〜。ほれ、エゴ・マニアック・ヴォーカリストに苦悩したギタリスト、答える番だぜ(笑)」

(笑)最近の彼の活動はどう感じてますか、ジョニー?

J「(笑)何となくイヤな予感はしてたんだけど。でもこういう質問はあのバンドを脱退して以来、何度も訊かれてるし、もう最近はそれほどテンパらずに答えられるようになったんだけどね」

B「うんうん、それで?早く何とかコメント出せよ」

J「いや、だからマジで正直なところを言おうとしても、今の彼に対し一人のアーティストとしては何の意見も感想も無いんだってば。だからこの件について訊かれるたびにやたらもどかしい気分になってしまうんだけど。つまりさ、今の彼が表現しようとしてる世界に、何の接点も見出せないから、賞賛も批判もしようがないんだよね。実際、誰も信じてくれないんだけど、僕は彼のソロ作ってそれこそ一枚たりとも買って聴いた事がないし。といってもわざと避けてるんじゃなくって、たまに偶然ラジオで聴いたりファンがわざわざ送ってくれたりしたものを1,2曲聴いたりはしていても、マジで何の感動も感慨も沸かないんだよ。だから、どう頑張っても評価らしいものを下すとっかかりさえないって感じなんだよね。今はもう」

何か根深いものを感じますなあ・・・・。

B「つまり、お前もそれだけ思春期から完全脱却したってことなんだよ」

J「多分そうなんだろうな。マジで今の僕が彼のレコードを一枚でも気に入ってたとしたら、何のためらいもなく買いに行くと思うよ。なのにそういう気が起きないってことは、それだけああいう表現が今の僕にとって遠いものになってしまったってことなんだろうし・・・。お互いの為にも良かったんじゃないかな、あの時別れてて・・・」

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