プリティ・フォーエバー二人。

インタヴューアー/児島由紀子 * 写真/ケヴィン・カミンズ

エレクトロニックは最初バーニーのソロ・プロジェクトの筈だったのに、結果的には80年代英国音楽シーンにおいて最も重要で有名なアーティスト達が揃ったスーパー・グループになった訳ですよね。何故この顔ぶれでなければならなかったんですか?

B(バーナード・サムナー)「有名人ばっかりだって?誰が?実際問題としてこの面子の中で仮にも有名人の肩書きが似合うのはニール・テナントとクリス・ロウだけだぜ。それに今作の中で彼らが書いたのはたったの一曲で、あとは全部、僕とジョニーとで書いたんだから」

えっ、そうだったんですか。でも貴方達2人だって立派な有名人じゃないですか。

J(ジョニー・マー)「そうは言うけどさぁ、僕ら自身は他人が思ってるほどそういう事に対して自覚的な訳じゃないからね。だからまさか後々になって、この自分達がスーパー・グループと呼ばれるようになるなんて夢にも思ってなかったよ。別に呼ばれたいとも思ってなかったしさ。僕ら2人にしてみればごく内輪だけのプライベートな作品を創ろうと思って始めただけなんだよね。本当にそれ以上でもそれ以下でもないんだ」

でも第三者の目から見ると一見、対照的なタイプに見える貴方達2人がこんなに仲良く仕事をしてるのが不思議でしょうがないんですけど。

J「僕個人にとっては不自然でも何でもないんだけどね。昔からニュー・オーダーのファンだったし、他人が思ってるほど僕の音楽の趣味は偏っていないつもりだよ。でもまぁ、世間の人々が勝手に作り上げた”スミスとニュー・オーダーは決して相容れない”というイメージが頑強に残ってるもんだから、僕ら2人がこうやって一緒に仕事してるのを見ると不思議に思ったりするんじゃない?でもそんな先入観は早いとこ捨てちまった方がいいって。本当にくだらない、何の役にもたたない縄張り意識にしか過ぎないんだから」

ええ、でもそういう個々の音楽性のせいだけじゃなく性格的にもかなりかけ離れているところがあると思うんですが、よく衝突しませんね。

B「へええ、そんな風に見える?自分じゃ以前から僕とジョニーは実に色んな面で似かよった性格してるなぁ、とむしろ不気味に思ってたくらいなんだけど」

ええっ!ウソでしょう?どう見たって全く正反対のタイプにしか見えませんよ。

B「(笑)じゃあどんな風に違うの?具体的に説明してくれよ」

バーニーはクールで論理的で何に対してもあまり感動しないアンドロイドのような性格。一方ジョニーは情熱的でむらっ気のある激情型で非常に人間臭いギタリストだと個人的には思ってたんですけど。

B「おい、僕はアンドロイドなんだってよ。ヒドイなぁ・・・。そりゃ今までプレスに対してはあまり感情を露にした事はないけど。でもインタヴューのシチュエーションで一体誰が感情的になれるっていうんだろう?」

J「(笑)でも彼女の言っていることは何となく理解できるよ。2人とも今まで積極的に自分からプレスに出てパーソナリティを公表してきたってタイプじゃないからね。私生活に関しても堅く口を閉ざしてきたし、僕らが本当はどんな奴らなのか凄く見えにくかったんじゃないかな。でもいい機会だからここで誤解を解いておくとさ、僕らだってたまには機嫌の悪い時もあるし、反対にキャピキャピ外に出て騒ぎたがったり時もある普通の男達だって事なんだ。決して世間で思われてるように一日中、ベッド・ルームに閉じ篭ってギターを爪弾いてる哀愁の美貌ギター・ヒーローが僕で、気難しくて醜男で扱いにくいイヤな野郎がバーニーで、なんてのはとんでもない幻想なんだって事でさ」

B「な、何だって?さっきから黙って聞いてりゃ自分の事ばかりかっこ良く言いやがって。初対面の人間の前だからって無理すんなよな。そのうちボロが出るぜ」

J「いや、僕は世間での通評を包み隠さず述べてるだけなんだけど(笑)。いや、でもマジでバーニーは人々に凄く悪いイメージを持たれてるよね。つくづく可哀想な男だと思うよ」

B「ふん。他人の事が言えた義理か。自分だって相当なもんじゃないか。あのスミスを解散させた張本人、世紀の極悪人と呼ばれてるくせして」

J「ほらね。バーニーは怒らせると面白いんだ。実際はむしろ人一倍情の厚い男でさ。醜男のうえに無愛想なもんだから最初はとっつきにくいけど、一度気心が知れると雨にも負けず風にも負けずっていう丈夫で長持ちするタイプなんだよ」

B「また言いたい放題言いやがって」

(笑)でもこうやって見てても凄く和気あいあいと楽しそうにやってるんですが、エレクトロニックは貴方達にとって一種の趣味みたいなものなんですか?

J「趣味だって?とんでもない。そりゃ確かにバーニーと一緒に仕事するのは楽しいし、普段はこんなバカばっかり言って喜んでるけど。でもいざ曲を書いたりレコーディングをしたりっていう時点になると、途端に雰囲気は違ってくるね。殺気みたいなものまで漂ってくるよ。2人ともスタジオの中じゃ一瞬たりとも気は抜かない主義なんだ」

B「それに趣味なんかだったら最初から夜中にメシも食わず14時間ぶっ通しで曲を書いたり、レコーディングしたりしないよ。ホントこの怠け者の僕が過去数ヶ月間は連日連夜そういうスケジュールに耐えてきたんだから」

J「そう。僕ら2人ともいい加減な仕事をするにはあまりにも音楽に対してこだわりがあり過ぎるってタイプだよね」

じゃあそのエレクトロニックがバカ売れしたらどうするつもりなんですか。2人ともそれぞれ自分達のバンドがあるのに。

J「でもエレクトロニックはバンドじゃないからさ。別に売れても売れなくても自分達のバンド活動に支障はきたさない筈だよ」

B「最初から成功してもしなくてもこの後はそれぞれ自分達のバンドに戻るっていう約束なんだ。で、実はもう既に4月中旬からジョニーがザ・ザ、僕はニュー・オーダーの新作制作にとりかかる準備もできてるんだよね」

J「そしてそれが今は凄く楽しみでさえある。お互いにバンドという閉鎖社会からしばらく解放されて、思いっきり精神的、音楽的な冒険をするってのは以前の僕らにとって絶対に必要な事だったんだ」

B「もともとバンドの機能そのものが誰にとってもストレスの溜まり易い構造になってくるからさ。メンバー全員の個性と芸術性をうまくバランスを取りつつ自分の色を出していかなきゃならないからホントに大変なんだよ。自分がどんなにいいと思ってる曲でも他のメンバーが全員賛成しないとボツなんて事もしょっちゅうだし、どんなにいいミュージシャンを探し出してきても”ああ、そうですか、じゃあメンバー・チェンジ”って訳にもいかないしさ。だからその人間が猛烈な音楽性を持ってれば持ってるほど欲求不満が蓄積されていくっていう仕組みになってるんだよね」

そういう問題は実際にザ・ザでもニュー・オーダーでも経験してるんですか。

B「勿論さ。まあ結果的には皆で話し合って民主的に解決していってるけど・・・」

J「バンドという集合体に関わる以上誰でもが必ず経験しなきゃならない事だよ」

じゃあこれはジョニーへの質問なんですけど、貴方は以前”バンドの魅力は音楽をやる仲間はこれしかない!という強迫観念みたいなものから生まれる”と言ってましたね。でも今の貴方にとってそういう時期は過ぎたんでしょうか。

J「君が僕にそういう質問をしたがる気持ちはよく解るんだ。スミスを離れて以来、まるで取り憑かれたようにあちこちのセッション・ワークに関わってはやめ、という浮遊状態を繰り返してきたからね。本当に他人から見たらバンド活動でさえなきゃ、何でもいいんだって風に見えたかもしれない。でも自分じゃああれらの仕事は全部セッション・ミュージシャンという個々のバンドと深い関わりを避ける形で続けて来たつもりだよ。それ以前に何年もバンドの一員としてのストレスは溜まってた訳で、ああいうサラッとした関係があの時期の僕にはどうしても必要だったんだ。でも正直言って今の僕はザ・ザのメンバーになれて本当に良かったと思ってる。これは別に今の自分の立場を正当化しようとして言ってるんじゃなく本気でそう思ってるんだ。実際、現在の僕が加入したいバンドは他に考えられないし、こうやってエレクトロニックに関わりつつザ・ザの活動を続けてもバンド内の関係性が崩れないっていう自由さは何にも替えがたい魅力だね」

じゃあプロジェクトに関わった事からそれぞれのバンドに帰った時の貴方達の音楽的貢献度というのはどういう形に変化して行くんでしょう。

B「まあ僕もジョニーもエレクトロニックで結構フラストレーションは解消できたし、以前ほどヘヴィな精神状態で続けていかなくてもよくなるとは思うよ。以前みたく自分の我が通らなくてもすぐヤケになったり、投げやりになったりしないでさ」

J「何て言うか、今まで僕らが自分達のバンドではトライ出来なかった側面をエレクトロニックで思う存分開放できたって感じなんだよね。最高のリハビリテーションて感じだな」

でもその割には今作は凄くコマーシャルなアルバムですね。こういう場合、もっとアーティスト・エゴ全開の実験作になったりするもんですが。

B「うん、でも別に売れるアルバムを作ろうと思って始めた訳じゃないよ。ただ、僕らが集まって作品を作るからには必ず”ああ、あの顔ぶれだったら多分凄く実験的な作品になるだろう。なんせ音楽エゴの強い奴らばかりだからな”と批判されるのが目に見えてたからね。評論家達にそういう攻撃し易い的を与えるのは何とも不本意だったんだ。だから出した途端、メッタ切りにしようと待ってる人間達に一泡吹かせてやろうと思ってさ。そんならこっちは最高品質の3分間ポップ・ソングを書いてやる。さあどう料理する?って感じで」

J「それに実験的な作品であるという逃げ口上を使うのは誰にでも出来る容易い事なんだよね。たとえそれが聴くに耐えないほどのヒドイ作品であっても”これは我々の実験だったんだ”の一言で言い逃れが出来るから。でもポップ・ソングとなるとそんな曖昧な言い訳は通らない。ただそれが高品質のポップ・ソングであるか全くのゴミかのどちらかハッキリと区別され目の前に突きつけられる訳だからさ。だからそういう意味で今作は3分間ポップ・ソングのフォーマットで僕らがどこまでやれるかっていう。試金石的な作品だったんだ」

なるほど。でもどんな名作に対しても必ず批判する人間というのは居るものでして、事実一部では”最高級のダンス・ミュージックではあるけれど、音楽そのものの持つ原始的なパッションに欠ける”という意見もあるんですけど。今の貴方達は音楽の持つパワーについてどう考えてるんでしょう。

J「以前よりは今の方がそういう事について理解できるようになったよ。これはバーニーも同意見だと思うけど、昔は若さにまかせてとにかく自分達の気持ちが高揚する音を探そうってのに必死で、それを聴く人々がどんな影響を受けるのか?って事に対して殆ど無関心だったんだ。自分にとってはそれほど重要な事じゃなかった。でもその後、色んな経験を通して聴き手からの反応を目の当たりにするにつれ、人々がポップ・ソングに賭ける3分間の逃避願望は、たとえそれがどんな形をとっていようと決して軽視すべき種類のものじゃないなと気づき始めたんだ。やっとそれを理解でき始めたのが去年あたりからだったんだけど、自分は今まで何てエゴイスティックな奴だったんだろうと身が縮む思いがしたよ。それまでは聴き手が全身全霊かけて与えてくれる思い入れを、まるで当然のような顔をして受け取ってたんだからね。音楽の持つパワーなんてものに関しては殆ど無知で無関心だったんだ」

B「それに”音楽の持つ原始的なパッションに欠ける”という批判は何も僕らの作品に対してだけじゃなく、どんなシンセ・バンドに対してもどんなダンス・ミュージックに対しても放たれる言葉だよ。機械を使ってあるからって即、”魂がこもってない”と決め付けられるのは凄く不公平だと思うな。それに僕らの音楽はいわゆるストレートなダンス・ミュージックじゃないしさ。1人でヘッド・フォン付けてじっくり聴き込むという方法にも充分耐えられるだけの音楽性はあると自負してるよ」

なるほど。今作の中には明らかにバーニーが書いた曲とか、明らかにニールが書いた曲ってのはあるのに、いかにもジョニーが書いた曲ってのはないですね。何故なんですか。

J「それは、多分、僕が詞を書いたり唄ったりした曲が無いからそう感じるんじゃない?実は一曲を除いてあとは全部僕がバーニーと共作したんだよ。でも”明らかにジョニー・マー”って感じの曲を書いてないという事実を知らされたのは正直言って嬉しいね。本格的なソング・ライティングに関わったのは実に4年ぶりだけど、その間に僕の音楽性が確実に変化してきたって証拠だからさ」

それにしても今や2人とも世界的なビッグ・ネームなのに未だにマンチェスターを捨てないんですけど、他の有名人みたくアメリカへ移住しようとか思わないんですか?

J「でも昨今のポップ・スター達は皆マンチェスター在住だぜ」

ええ、まあ最近はそういう風潮になってきましたけど・・・・・。

J「とは言うものの実は一時、本気でニューヨークに住もうかと思った事があるんだ。87-88年ごろだったかな。映画”カラーズ”のサントラ仕事をしてた頃で、あの街だったらいい曲が書けるんじゃないかと思ったんだよね。でもその後マンチェスターに戻ってみて、今、創造的な仕事をしたいんなら絶対この街だって事に気付いたんだ。別に家族が居るからとか自分の故郷だからって理由からじゃなく、純粋に芸術的な観点から見てもね。でも確かに自分のホーム・タウンというのは落ち着けるし、好きだけどさ」

B「そうさ。この街にいると正気が保てるって。それに80年代後半あたりから年がら年中あちこちツアーして回ってたし、僕らみたいな生活してると別にどこに住んだって変わりはないんだよ」

じゃあ税金問題という面では外国に逃げ出したいとは思いません?今回人頭税も廃止された訳ですし、貴方達なんかこれから重税に悩まされるんじゃないですか。

B「(笑)税金問題ねぇ・・・・」

J「(笑)確かに大問題だなぁ。でもこれはもう諦めて払う以外ないんじゃない?誰か社会意識が強い人間が自費を出して現政府を買い取るまではさ」

B「僕はそんな役目はゴメンだぜ」

J「(笑)ホントにこいつは社会意識のカケラもない奴なんだから。でもさっきのは極論としてもいすれそこまでする必要もなくなると思うよ。税金が払えない人間だけじゃなく、払える人間の中にも現政府の金の使い方に不満を感じてる連中が大勢出てきてるから。病院やホームレスへの援助は切り詰めるくせに、兵器武装や企業の私営化などには金を湯水のように消費してるからね。本当に現政府の失策を挙げ始めるとキリがないけど、80年代にサッチャーリズムが成功したのは政府が一部の裕福な社会主義者達の弱点をうまく利用したからなんだ。税金をちゃんと払わせておいてそのうえにまたチャリティに協力しましょうという風潮を世間に広げたからだよ。ライヴ・エイドやその他一連のチャリティ・イベントは言わばそういう政府の恰好の道具に利用されたんだよね」

じゃ最近の若いマンチェスター・バンドを見てどう思います?かつての自分達の姿を投影したりしません?

J「僕より若い連中って一体誰の事?」

ストーン・ローゼズとか。

J「奴らは僕なんかよりずっと年食ってるよ」

ええっ!!

J「(笑)というのは勿論冗談でさ。彼らはいいよね。ハッピー・マンデーズも好きだし、808ステイトも好きだしインスパもシャーラタンズも僕はみーんな大好き。反感持つ理由なんか何ひとつないよ」

B「でもローゼズやマンデーズなんかもう8年選手だからなぁ(笑)」

えっ、ローゼズも?

J「そうさ。両方ともスミスが結成される直前あたりに組んだんだぜ。だからよく考えてみたら僕より先輩なんだよな」

B「そう。ただ僕らの方が彼らより早く成功したってだけ(笑)」

J「でも僕らに触発されて本当に若いバンドがどんどん進出してるってのはいい事だよね。凄く健康的だと思うよ。でも何で連中はお互いの悪口ばかり言い合って足を引っ張り合うんだろうなぁ。本当に見ててイヤになる時があるよ。新しいムーヴメントを築くには皆の結束力が一番必要だってのに」

本当にそうですよね。じゃあもし彼らにバンドとして長持ちする法をアドバイスするとしたら、どんな事を助言してあげたいですか。

B「無理してバンドなんか続ける事はないぜ。ロクな事はないから、ってとこかな」

(笑)なるほど。じゃジョニーは?

J「僕のバンド歴を知っててそういう質問をするのは野暮ってもんだろう(笑)」

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