CROSSBEAT AUG/96

インタビューアー:米田 実

バーニー、何か奇妙な病気にかかったらしいですね?書きものが出来なくなるという。

B(バーナード・サムナー):ああ、それはデマなんだ。全く根も葉もない噂だよ。TVに出ようとしたりすると、そういう話がどこかから現れてくるんだよね。
J(ジョニー・マー):そうさ、病気になんか誰もならず全ては滞りなく進んだんだ。

とはいえエレクトロニックとして新作を発表するのには、5年もかかってしまったと?

B:ジョニーはザ・ザのプロモーションに時間を取られてたからね。ギグもやってたし。僕もニュー・オーダーのレコーディングに入ったりしてたから。”リパブリック”を完成させるのに2年もかかったんだよ。別に言い訳してるつもりじゃないんだけど。
J:僕達が最後に一緒にプレイしたのはヒートン・パークでのギグだった。他にも何バンドか出てたよね、あの時は。
B:簡単に言うと、別に一緒にやりたいと思わない期間が5年続いたって事なんだよ。ジョニーがザ・ザで弾きたいと思って、僕もニュー・オーダーに本腰を入れる事になって。でも、今回のエレクトロニックの活動に関しては、もう次のプランもあるからね。次作はまた5年先なんてことはないよ。

じゃあ現在はエレクトロニックがあなた達のメイン・プロジェクトだと思っていいわけ?

B:ああ。
J:そうだよ。今はこれだけに集中してる。

アルバム用に曲はどれくらい書いたのですか?

J:30-40曲書いたんだ。特に”フォービドゥン・シティ”と”フリー・フォール”の2曲に関しては、今の僕達が投影されてると思う。聴く人によってとり方は違うかも知れないけど、今度のエレクトロニックは新しいコンセプトで展開していってるっていうのが伝わるんじゃないかな。僕達自身もお互い相手に働きかける作用が判ってきた所だし。それにエレクトロニックがどういう形で動いていくべきかも見えてきた。だいたいどのバンドでも、セカンド・アルバムって長くかかるものじゃない?まあ、次はもっと短くするけど。でもすごく強いフィーリングを持ったアルバムが出来たと思うよ。ファースト・アルバムの延長線上に安易に位置するものじゃなくてね。僕達も前進し、曲も成長している。ファースト・アルバムよりも強く、非の打ち所のないものが出来た。ある意味、プログレッシブな要素があるよね。昼間に聴くのと夜中の3時に聴くのと同じテンションでいける。
B:僕は作品を仕上げていくプロセスを意識的に変えてみたかったんだ。ニュー・オーダーでスタジオに入ると、すぐパーティみたいになって、飲んで騒いでいろいろやって、いつの間にか出来ましたっていう感じなんだけど、そういうのはいい加減イヤになってたからね。今回は、いざアルバム制作に入ってからは、きちんとした形で曲を書いて、寄り道もせずにスタジオに行き、ジョニーとアイディアを出し合って、酒は控えてっていう風にやりたかった。ある意味、自分自身の中でカルチャー・ショックを起こしたよ。だって77年以来、僕は家からスタジオに直行した事なんてなかったんだから(笑)。

でもパーティ気分で作ってるのと、そういうビジネスマンみたいな調子で作ってるのとでは、出来てくる曲のタイプも違ってきません?

B:もちろん曲に反映された部分ってあるよね。夜中の1時じゃなく、午後1時にスタジオに入って録ってるんだから。今までのやり方と比べたら大きな違いだよ。逆に今になって思えば、過去にやってたことの方が恐ろしく感じるくらいさ。
J:快楽主義ってものには、いつかツケが廻ってきたりするものだからね。本当は夜中に録った方が簡単だったんだよ。みんな夜型なんだからさ。スタジオって、凄く閉鎖された空間じゃない?あんなところ夜中じゃなきゃ誰も入りたいなんて思わないもんね。みんなが眠っている時間にひっそりと何かを作る、それが今までのポップ・ミュージックの法則だったわけさ。でも今回、我々のマジック・アワーは昼間だったんだよ。平日の勤め人達の営業時間中に起こったマジックって感じだよね。
B:きっと各自がスタジオの中で、自分自身のトワイライト・タイムを作って、その中で作業してたんだよ。
J:おいおいバーニー、日本人用にちょっとセンスのある答え方をしようとムリしてないか(笑)。

他にエレクトロニックというユニットを特徴付けるものはないですか?

B:エレクトロニックってね、つまりジョニーって、僕自身を評価する上での新しい基準なんだ。ファースト・アルバム以来、幾つかのプロジェクトをこなしてきて、その度に3人目以降のメンバーが変わってきた。今回はクラフトワークのカール・バルトスが入ってくれた。でもみんな流動的なメンバーなんだ。ジョニーだけが僕と同じようにそれぞれのプロジェクトに満足してくれてたら、それでいいと思ってる。
J:だからアルバムのレコーディングでも、同じメンバーで全曲通してっていう形にはしていないんだ。
B:そうだよね。カールにしたって全曲参加したってわけじゃない。数曲だけだよね。ドラムも曲によって違うんだ。その方が新鮮味を失わずにやれるような気がしてね。それぞれのパートがパーマネントな形で4人とか揃って何年も続いていくと、やっぱり違ってくるじゃない?
J:これをバンドって形で進めていくと、ぶつかるんだよね。4人の人間がいて、全員が違う方向を向いていたりしたらさ。そんなバンドは、もういらないんだよ、はっきり言って。
B:例えば、車を運転するのだって、ある一定の規則にしたがって右折のときはウィンカー出して、ギア代えてってやるでしょ。大型のバスなんかはどうなのかよく知らないけど。僕はバスの運転までは出来ないから。
J:僕は出来るよ(笑)。
B:まあとにかく規則にしたがって行くのって、ある意味いい感じじゃない?みんなが自由にバラバラにやるよりも。何か抑制された感じがあってさ。ただ、長旅だったらナビゲーターも必要になってくる。そのナビゲーターが僕達のゲスト・ミュージシャンなんだよね。
J:プロデューサーを付けないことに関してだって、きっと僕達の事を支配欲の強いコントロール・フリークだと思ってる人もいるだろうけど、物理的にその方が楽だからなんだ。スケジュールの事を気にしてやりくりしていくのが煩わしいからね。
B:僕達にとってのプロデューサーって、3人目以降のメンバーの事だよね。だって基本的に本職のプロデューサーってビジネス的な人種だから、半年ごとに違うバンドを渡り歩いてアルバムを作っての繰り返しじゃない。だから音楽に対するアティテュードが無いっていうかさ。仕事としてのヴォーカル録りってイヤなんだ。だったら他のところでやればいいって思う。

カールの入ってきた経緯と、その仕事振りについて教えてくれますか?

J:彼を選んだ理由は、バーニーが説明してくれるよ。
B:クラフトワークが隣のスタジオに入ってた時にね、カールがサンドウィッチを作ってくれたんだ(笑)。ザウアークラフトにドレッシングをかけてね。僕は元々クラフトワークの大ファンなんだよ。凄くインスパイアされた所もあるし。ジョイ・ディヴィジョンの頃なんか、ギグでクラフトワークをプレイしたこともある。パンクばっかりの頃に”ヨーロッパ特急”のクリップを見て、あの時に大きく方向転換したんだと思うよ。ああいうのってきっと50年代を生きた人たちが初めてロックンロールに遭遇した時と同じ感覚だったんじゃないかな。凄く新しいものだった。ロックよりも新しいロックンロールだったんだ。で、僕の友だちがベルリンでNFSっていうトランス・ダンスのレーベルを持ってて、彼が改めてカールに連絡を取ってくれたんだ。その時、彼はクラフトワークを辞めた後で、一緒にやってみようって言ってくれてね。
J:僕は最初、カールってもっと間接的なプレイヤーだと思ってたんだけどね。クラフトワークって元々は交響楽団のメンバーから来てるらしいから。でも一緒にスタジオに入ってみたら、彼はキーボードだけじゃなくて、ストリングスの音色やメロディに至るまで関わってくれた。ジャム・セッションまでしたんだぜ。僕達にとってジャム・セッションなんて普段はありえないことなんだよ。それでコーラス・パートのアイディアを出し合ったりとかしながら進行していった。僕も彼のサンプラーと同時録りでギターを弾いたりしたし。カールが参加したのは”タイム・キャン・テル”等、数曲だけだったけど、貢献は凄く大きいよ。
B:カールって、かなりトラディショナルなソングライターだと思うね。
J:そういえば最初にスタジオに入った時、カールがコンピュータのセッティングをしながら”これは必要ないかもね”って言って、僕のアコースティック・ギターを弾き出したんだ。ブルーグラスっぽいフレーズをね。それからスモール・フェイセスとか。わりとB級なのが好みらしい(笑)。彼の60年代音楽の知識にも正直言って驚いたよ。

機材に関して、前回とは大幅に異なったものを使用したって聞いてるんですけど、具体的に少し内容を教えてくれますか。

J:いい質問だねえ(笑)。勿論曲によって色々使い分けてるんだよ。
B:ファースト・アルバムで使ったシンセサイザーはアナログだったんだ。古めかしい音を意識したかったから。元々、僕のルーツはアナログ・シンセなんだ。だから逆に、しっくり来る感じはあったんだけど、今回のアルバムではローランドの108とか、バンクに凄い量のサウンドが内蔵されてるんだ。それと、ムーグも結構使ったよ。
J:ローランドのリズム・ボックスはドラム・サウンドを作るのに使ったよね。
B:ドラム・サウンドには凝ったよ。ベースとドラムはいろんなソースから取って作った。エレクトロニック独特のベース、ドラム・サウンドになってるよ。それにジョニーのコンピュータ・ギターも。

打ち込みばかりじゃなく、生音も使っていますか。

B:生ドラムもあれば、打ち込みもあるし、シンセ・ベースも使ってる。ベース・ギターも使ってる。生音にしろ、打ち込みにしろ、本物の音が作りたい。それだけなんだ。一つのスタイルに固執する必要はないだろう?その音その音に必要なものを組み合わせていけばいいんだから。ただ古臭いだけの音楽には僕は共感出来ない。そいつは次の時代のルーツには成りえないから。
J:プロデュースに関しても、サウンド・エンジニアリングにしても、いい感じだよ。エンジニアが若いんだけど、凄く腕のいいやつでね。将来性もバッチリだと思うよ。

ジョニー、今回はギターの活躍が前より多いようですね。

J:ファースト・アルバムの時にギターの音数が少ないってよく言われたんだけど、エレクトロニックを結成した理由は、今までのギター・サウンドを改革したいってところにあったんだ。スミスの時は自分の為にギターを弾いてて、イミュレーター2とかサウンドFXも使ってた。ピアノ・サウンドも使ってたし。エレクトロニックのファーストではバランス良く仕上がってると思う。ここ7-8年の間、僕は憑かれたようにギターを弾いてたみたいなんだ。バーニーと一緒にやりだしてから、シンセサイザーにもハマっていったけど、最近のダンス・ミュージックって、プロデュースがいいと、凄く人間臭いだろう。ギターの音なんか、やたらヒューマンな感じだったりして。でもサウンドの持つパワーを弱めていってしまうこともあるんじゃない?僕は曲に対して”与えていく”姿勢でありたいんだ。今回のアルバムの”ダーク・エンジェル”なんか、凄くレイヴな曲だよ。僕はダンス・ミュージックにギターを重ねる時は意表を突きたいんだ。だって、僕はジョニー・マーなんだから。

テクノっぽい曲は、やはりバーニーの貢献度が高いんでしょうか。

J:曲の面では、それぞれが自分のエリアを持ちつつ最終的には対等にやってるよ。詞とヴォーカルは違うけど。

ギターのジョニー・マーの記憶しかない人間にとっては、ギターレスの曲であなたが何をしてるのか、いまいち判りづらいんですよね。

J:そうだなあ、”フリー・フォール”なんかいい例だと思うんだけど、あれはヴォーカルレスでテクノ・ヘヴィでしょ。あの曲は僕はピアノを弾いてるんだ。それにストリングスのセクションをコンピュータ・ギターで入れてる。で、ドラムは実はバーナードなんだ。

あなたのギター・スタイルは、さすがにスミスの頃とは大分変わってきましたね。

J:そうだろうね。リズム・ギターのセクションにシーケンサーを使うようになったし。一日中シーケンサーのことばかり考えながら過ごした時もあったよ。フレーズが変わるときのコンマ1秒の差でシャッフル感が変わってくるから、コンピュータに関わってくることによって、プレイも上達したかもね。今回僕は弾きたいと思った通り弾いて、それをデジタルで録り、後から編集したんだ。プロディジーが使ってる技法も、こんな感じだと思うよ。ギター・ミュージックの未来を暗示するような作品になったと自負してる。70年代みたいなギターがモロに前に出てるスタイルには飽きちゃったんだよ。技術の進化はロック・ギターの歴史に影響してきてると思うんだ。その約30年の歴史を僕は止めるつもりはない。流行や評価を気にすることなくやっていくと思うよ。

では、もうモリッシーのような人と一緒にやる機会は・・・

J:ないね。その必要性を感じないんだ。

でも最近また彼と会ったりしてるんでしょう?

J:時々ね。でも、ここしばらくは会ってない。

彼は今になってスミス時代の曲をやってるみたいですけど。

J:ああ、そうみたいだね。

そのことについて、本人から何か断りを入れてきたりしましたか。

J:まさか、そんな、子供じゃあるまいし(笑)。
B:作曲者にいちいち断りを(笑)?
J:歌ってもいいかな?って聞くわけ(笑)?

いや、なければ結構です。ではザ・ザのマット・ジョンソンとは?

J:全然だね。随分長いこと会ってないよ。”ダスク”以降、行き違いがいろいろあってね。次のプロジェクトにも参加しないつもりなんだ。ツアーにも行きたくないし。以前はマットも僕にソングライティングとかの面で、バンドへの参加意識を持たせてくれたけど、今はそういう気持ちが薄らいでしまった。

ニュー・オーダーの方は?

B:最近はメンバーとは会ってないよ。

では今のところ、2人共エレクトロニックにかかりきりであると?

B:そうさ。今プロモーションの真最中。
J:とりあえず世界中の人に、このアルバムに込められたパワーと愛を判って欲しいんだ。エレクトロニックは妙な先入観を持たれてしまっている。まあ、必ずしも悪い要素ばかりではないんだけど。ヨーロッパを廻ってると、ザ・ザの事ばかり聞く人もいるからね(笑)。

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