BUZZ '00 SEP.

テキスト:斉藤知太&鈴木あかね

●フジ('00/29TH/JULY)をやり終えてみていかがでした?

「まあまあ、かな。事前にサウンドチェックが出来なかったし、誰も曲を聴いた事がないという環境だったろ?大半はスミスのファンで僕を見たくて来てるのもわかってたし、ヒーラーズにスミスっぽい所は無いから、僕だけじゃなくて、お客さんの方も努力を要したんじゃないかな。変な気分だったけど、日本は本当に久しぶりだし、みんな温かく迎えてくれて良かったよ」

●歌もとるフロントマンとしてヒーラーズを始めるには、やはり相当の決意が必要でしたか?

「前からずっとやりたいと思っていて、ようやくタイミングよくメンバーが集まったって感じかな。実際バンドが出来てみたら、新しい事をやりたい気持ちが盛り上がってきたし、UKギターロックには飽き飽きしてたんで今みたいなヘヴィでロックっぽい方向でいきたくなったんだ。あと、思ったのは、今回は僕の曲を強烈なキャラクターの人間の手で薄められたくないなって事」

●(笑)。

「(笑)。今まで一緒にやってきたのがマット・ジョンソン、モリッシー、クリッシー・ハインド、バーナード・サムナーという、まあ大物で、ある意味、今回はあまり経験の無い連中と一緒にやってるから・・・解るかな。もう今までとは何から何まで違うわけで、そうすると、昔の経験と比べてどうこうっていうのはあんまり考えないんだよ」

●ヘヴィでロックな方向性、ということですが、何故そうした道を選んだんでしょうか?

「何て言えばいいかな・・・。今のポップ・ミュージックは、やり口が直球過ぎると思うんだ。昔はストリートの人間もポップに興味を持ってたんだけど、今の人はポップになんか寄り付かない。僕自身、ブライアン・イーノとかカンとかモグワイとか、もっと深みのあるものを求めてる。こういう音楽が現代社会をどこまで反映しているのかは解らないけど、下品で即効性のある、売らんかな商売で成り立ってる世界に対して解毒剤のような作用を持つような気がするし、そう願うよ。理想をいえばヒーラーズでももっとヘヴィで長尺なインストゥルメンタル曲をやりたい位でね」

●なるほど。ただフジで聴いた音ってイーノやカンとはまた違うような感じがしたんですが(笑)。

「(笑)ん〜。インスピレーションとコピーは違うからね。アイディアやその曲から受けた印象を自分の音楽に昇華させていくのがインスピレーションだよね?スミスの音はストラングラーズやフィル・スペクター、ロネッツなんかに触発されて作ってきたけどそういう音じゃなかったろ?ヒーラーズもきっとそういう事になるんじゃないかな」

●どの時代より、今のポップ・ミュージックが特別酷い、というのはあなたの実感なんですか?

「確かにどんな時代でも9割はクズだったよ。ただ、今のイギリスの社会の雰囲気って僕の幼児体験とリンクしてる気がしてならないんだ。具体的には僕は63年に生まれたから69年から72年の雰囲気なんだけどね。ヘヴィで暗い雰囲気、それに通じる気がしてね。今のイギリスは凄く暴力的で殺伐としたムードが漂っている。社会やユース・カルチャーが大きく分断されているように思うんだ。僕達とやつらって感じでさ。本当に音楽って社会を反映してる、っていうのが僕の実感だな」

●だとすれば、あなた自身、スミスが80年代に果たした役割って何だったと思いますか。

「そうだなあ、ちょっと考えさせて・・・僕たちは感受性の強い人たちを一つにした。ビールをあおって暴れてる連中じゃなくてね。見た感じも考え方も似ていて、例えば本を読んだっていうことも堂々と人前で言える、そういう環境を生み出したんだと思う。つまり、人生において、音楽を通して心の深い所を模索したいと思っている人たちをひとつにした。それがスミスの果たした役割だった。いいポップ・グループの条件である、一つの集団/族を生み出したって事だよね。でも僕には80年代を語る資格はないらしいよ。2,3年前ノエル・ギャラガーと話してて”80年代はそれほど悪くなかったんじゃないか”って言ったら、ノエルは”あんたに何がわかる?あんたはスミスのジョニー・マーだったんで、いい思いしかしてないじゃないか”って(笑)。僕が生きていたのはスタジオとステージだけでストリートから隔たった生活をしてたんだね。だから社会との関わりは正確には言えない。でも、一つのかけがえのない集団を作ったのは確かじゃないかな」 

END